亡くなった方の不動産がわからない場合

不動産の特定について

「亡くなった父は不動産を所有していました。自宅です。」——この一言だけでは、実際には不動産の特定には不十分です。「自宅」といっても、不動産としては複数の「筆(ふで)」が存在することがあります(筆とは、不動産登記上の一つの区画を指します)。

具体的には、「建物(居宅)」「その建物が建っている土地(宅地)」、「さらに家の前の道(公衆用道路など)」といった3筆に分かれている場合が一般的です。

この点こそが、後々のトラブルを防ぐために非常に重要です。よく耳にする「登記漏れ」という言葉ですが、たとえば家の前の「道」が近隣住民との共有持分であった場合、共有部分の名義変更を失念すると、思わぬ支障が生じることがあります。

数年後に自宅を売却しようとした際に、共有道路部分の登記漏れが発覚すれば、「相続登記による名義変更」を経ない限り売却はできません。相続登記には、戸籍等の収集、相続人全員の実印および印鑑証明書の取得などの手続きが必要となります。

さらに、名義変更の前に別の相続が発生していた場合、相続人の数が増え、面識のない相続人や、所在不明の相続人が現れる可能性もあります。

不動産の特定が困難な場合は、専門家に調査を依頼することを強くお勧めします。

具体的な調査方法

通常は、以下の方法で不動産を特定することが可能です。

権利証の確認

最も基本的かつ確実な方法は、登記済証(いわゆる「権利証」)や登記識別情報通知の確認です。特に平成17年以降に取得された不動産については「登記識別情報通知」が交付されています。

地番や家屋番号といった不慣れな用語も、権利証を確認することで明らかになります。

なお、相続手続きでは「本籍」「住所」「地番」「家屋番号」といった異なる住所表記が登場するため、混同に注意が必要です。

ただし、権利証が所在不明となっている場合は、次の手段を検討します。

納税通知書の課税明細書を確認

市区町村から年に一度送付される固定資産税の「納税通知書」には、課税対象となる不動産の所在地(地番)、家屋番号、評価額等が記載されています。

ただし、非課税の不動産(例えば私道等)が記載されない点には要注意です。実際、登記漏れの多くはこの「非課税不動産が記載されないこと」に起因します。

仮に評価額が0円でも、課税台帳に記載されることで所在が判明するため、納税通知書への全物件記載が望ましいと思われます。

非課税不動産の存在に留意し、「必要であれば市区町村に直接問い合わせる」ことも有効な手段です。

納税通知書が手元にない場合は、次の方法を検討してください。

名寄帳を市区町村で取得

「名寄帳(なよせちょう)」を取得することで、市区町村が課税対象として把握している不動産の一覧が確認できます。

ただし、名寄帳は多くの場合、市区町村の本庁でしか発行されず、また市区町村単位で管理されているため、不動産が複数の市区町村にまたがっている場合は、それぞれで請求が必要です。遠方であれば、郵送での請求も可能です。

通常は、以上の3つの方法で多くのケースに対応可能です。

それでも漏れてしまう不動産

上記の調査方法は有効ですが、「そもそも不動産の存在を誰も知らない」ケースでは、手の打ちようがありません。

たとえば、3代前(明治・大正生まれ)の名義のまま相続登記が未了であった不動産が見つかり、相続人が50人以上にのぼる例もあります(実際にあり得ます)。

このような場合、時間とともに相続人の数が増え、海外居住者や面識のない相続人が含まれることで、相続手続きは非常に複雑になります。

たとえば、評価額500万円の不動産を50人で相続する場合、1人あたり10万円の持分となりますが、相続人の確定、戸籍の収集、遺産分割協議の調整などの手間を考えると、手続きを進めること自体に意義を見出せないこともあります。

また、高齢の相続人が多い場合、家庭裁判所で「特別代理人」の選任が必要になることもあり、完了までに1年以上かかることも珍しくありません。

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